「また、来られないの？」
その一言を、小さな声でつぶやいた息子の表情が、今でも私の胸に焼きついています。
私は看護師として13年間、総合病院の病棟で働いてきました。
昼夜を問わず命と向き合う現場で、誇りと責任をもって働いてきたつもりです。
でもその反面、家庭、特に“母親としての役割”は、いつも後回しにせざるを得ない日々でした。
夜勤、休日出勤、急な呼び出し。
子どもの行事を諦めることも慣れっこになっていたけれど、それが「当たり前」になっていく自分に、どこかで違和感を覚えていたのも事実です。
運動会に行けなかったのは、これで3年連続。
1年目は「ごめんね、仕事だから仕方ないよね」と自分を納得させました。
2年目は「またか…」と心が重くなりました。
そして3年目、息子が小さな声でつぶやいたその言葉に、私は心を刺されました。
“母親失格かもしれない”
それはずっと心の奥にあったけれど、見ないふりをしていた気持ち。
その夜、私は初めて「転職」の2文字を検索しました。
結果、私は職場を変え、2024年10月、息子の運動会に初めて最初から最後まで参加することができました。
ゴールの瞬間、息子が真っすぐ私の方へ走ってきて、汗だくの顔で「ママ、来てくれてありがとう！」と抱きついてきた時――
これまで積み上がっていた罪悪感、不安、寂しさがすーっと溶けていくのを感じたのです。
本記事では、私の実体験をベースに「家庭と仕事を両立するために、看護師がどのような職場を選べばいいのか」を深掘りしていきます。
もしあなたが今、同じように罪悪感やモヤモヤを抱えているのなら、大丈夫。環境を変えれば、働き方も、家族との関係も、人生そのものも変えられます。
看護師の働き方が家庭に与える影響とは？
看護師の仕事は、世間一般の「働くママ」とは少し事情が違います。
24時間体制、夜勤、急患対応、不規則なシフト…命を預かる責任と緊張感。
それらは誇りある仕事の一部ですが、同時に家族、とくに子どもとの時間を圧迫してしまう大きな要因でもあります。
「明日の参観日、行けるかまだ分からない」
「お迎えはパパに頼まないと…」
「土日は全部シフト。家族で出かけるなんて夢のまた夢」
こうした日常が続けば、親としての自信を失っていくのも無理はありません。
一番大切にしたい存在との時間を、自分の手で諦めなければならない――それは小さな傷として、積み重なっていくのです。
転職によって変化した看護師の実例紹介
夜勤のないクリニックに転職し夫婦喧嘩が減った
「夜勤明けでイライラ」「寝てばかりで家族とすれ違い」そんな生活が、夫婦関係にも影を落としていました。
けれど、日勤のみのクリニックに転職してから、会話の量が増え、喧嘩の頻度も減ったという声が多数寄せられています。
共に過ごす「普通の時間」の大切さを、あらためて感じることができるようになったといいます。
人間関係の良好な職場でメンタルが安定
看護師同士の人間関係は、働きやすさを大きく左右します。
「毎朝、出勤前にお腹が痛くなる」「上司の顔色ばかり伺っていた」という状況から解放されることで、心の余裕が生まれ、家庭でも笑顔が戻ったというケースもあります。
収入よりも家庭時間を優先した選択が吉と出た
「収入は下がるかもしれないけど、家庭が壊れる方がもっと怖い」
そんな思いで転職を決意し、結果として精神的にも家族関係的にも大きな満足を得たという体験談もあります。
経済的な豊かさだけが“幸せ”ではないことに気づかされます。
家庭内トラブル減少の主な理由
ストレスの軽減
慢性的な疲労や緊張から解放されることで、家族に対する当たりの強さが減少します。
「前より怒らなくなったね」と言われるようになった、という声もよく聞かれます。
生活リズムの安定
子どもと同じ時間に寝起きできるようになることは、家族としての基本の「接点」を取り戻す第一歩です。
一緒にご飯を食べ、話をする――そんな日常の積み重ねが家庭を安定させます。
自己肯定感と対応力の向上
転職後、「自分らしくいられるようになった」という感覚を持つ看護師は少なくありません。
無理をしない働き方が、自信と心の余裕を生み出します。
家庭と両立しやすい看護師の転職先の特徴
日勤中心・残業少なめ・土日祝休み。
家庭と両立を望む看護師にとって、この3点は非常に大きな指標になります。
具体的には、
・内科・小児科など地域密着型のクリニック
・健診センター、企業内診療所
・訪問看護ステーション（条件が整えば）
また、職場の雰囲気やママ看護師の在籍状況も、長く働けるかどうかの判断材料になります。
転職を検討している看護師へのアドバイス
自分の優先順位を明確に
「給料」「休日」「場所」「人間関係」…
すべてを満たす職場は少ないからこそ、自分にとって“絶対に譲れない条件”を明確にしましょう。
家族との相談を忘れずに
転職は一人だけの決断ではありません。
パートナーや子どもとしっかり話し合い、応援を得ることで、不安も小さくなります。
転職エージェントの活用
看護師専門のエージェントは、求人紹介だけでなく、履歴書の書き方、面接対策、条件交渉までフルサポート。
自分一人ではたどり着けない職場に出会える可能性が広がります。
まとめ
看護師でも、母親として、妻として、一人の女性として、人生を大切にすることは可能です。
転職を考えることは逃げではありません。
むしろ、「自分らしい働き方を選ぶ勇気」だと私は思います。
もしあなたが今、ほんの少しでも「変わりたい」と思っているなら、それはもう、人生を動かす第一歩です。
どうかその想いを、見逃さないでください。
あなたの決断が、家族の笑顔につながることを願っています。
